雅子皇后や紀子妃殿下のお支度もされた皇室御用達の
与儀美容室が顧客から学んだ美しい生き方とは?
創業70余年の老舗美容室が学んだ一流のお客さまの作法
このように、一流のお客さまは、プロに相談するのが一番の近道だということをよくご存知なのです。
最近は、人と会話をするのが億劫なため、なんでも「インターネットで検索する」という方が増えています。しかし、そうしたネットが教えてくれるのは、誰か別の方が導び出した答えが多く、ご自身にフィットするものが出てくるとは限らないのではないでしょうか。
少々面倒に感じてもその道のプロとお話されれば、一回でご自分にとって一番的確な答えを知ることができます。ただし、パッと入っていらっしゃった一見のお客さまでは難しいのです。
こう申しますと、常連のお客さまを贔屓しているように感じられるかもしれませんが、常連であるということは何度もお話してコミュニケーションをとらせていただているということです。よく存じ上げているので、的確なサービスを提供できます。ですが初対面の方ではそうはいきません。
一流の方は、たとえばお食事なら「和食はここ」、「イタリアンはここ」、「フレンチはここ」…といったように各ジャンルに行きつけのお店をお持ちです。そこに何十年と通われて、何も言わなくてもお好みのものがテーブルに並ぶような関係を築かれていらっしゃいます。ですから、何かあったときに多少の無理もきくのです。
以前、私どものお客さまで、お草履の箱を無くされてお困りの方がいらっしゃいました。京都の老舗の履物屋さんのお草履でしたが、母は躊躇なくお店に電話をかけてその草履の「箱だけ」を取り寄せました。母も履物屋さんも長年のおつきあいの中で「その方のためなら」と思ったのでしょう。もちろんお客さまはお喜びでした。
これも、長くおつきあいしていたからこそできたサービスでしょう。
こういったお話をすると、時々「そんなおつきあいは面倒でできません」とおっしゃる方がいるのですが、私はむしろ深くおつきあいした方が面倒がなくなると思います。美容室にいらっしゃるお客さまを見ていると、そう感じるのです。
こういったお客さまの姿は、私たちのような一般の人間にとっても心地よい暮らし方の参考になるのではないでしょうか。
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『与儀美容室がお客さまから学んだ美しい生き方』
与儀育子
戦前、銀座の「資生堂美容室」で働いていた初代・与儀八重子氏が1948年、焦土となった銀座の一角に「シャンプーができる美容室」として開業したのが与 儀美容室のはじまり。その後、丁寧な仕事ぶりや革新的な技術の導入、さまざまな縁も重なって宮家が通うようになり、その後、順宮厚子内親王殿下(池田厚子 さま)の婚礼の支度などを任されるようになる。さらに紀子さまの婚礼支度、雅子さまの婚礼支度、眞子さまや佳子さまの式典や晩餐会でのお支度など、皇室か ら信頼される一流美容室に。さらに与儀美容室は、縁あって山中教授や本庶先生など、ストックホルムで行なわれるノーベル賞受賞者の授賞式支度もされていま す。
そんな一流美容室でありながらも、モットーは「お客様目線」。例えばカラーで白髪を隠そうとしている客に対してカウンセリングし、白髪を活かす「グレーヘ ア」を提案するなど(※そのままカラーをすれば、当然カラー料金が利益になるが、個人の髪質やスタイルなどを踏まえ、客のためにならないことはしない=利 益のみを追求することはしない)、偉ぶることのない仕事ぶりはテレビなどでも特集されています。
本書は皇室御用達ながらも、けして高飛車になることなく地に足をつけた仕事ぶりで高い評価を得ている与儀美容室の「仕事の流儀」を紹介。さらに三代目であ る与儀育子氏が考える将来の展望なども含め、あまり語られることのなかった、与儀美容室の「今まで」と「これから」にも迫ります。